「大丈夫」
口癖みたいに、頼りない魔法のように。
「大丈夫」
本当は全然大丈夫じゃないのに。
人を好きになって苦しんで、あなたは本当の私が泣いているのを知らなくて。
「大丈夫」
「大丈夫」
乳房に口付けをするあなたの唇が私のことだけを紡ぎだしていけばいいのにと、まるで少女みたいな気持ちになって、あなたのことをもっと理解しなきゃと、あなたに頼るよりも頼られたい一瞬のために強がって、恋をする苦しさと、恋を失ったときの毎日の色あせた世界への耐えられなさと、難しくなって、こんがらがって、壊れそうになって、少しだけあなたに手を伸ばして「なんでもない」なんて、最後に強がって、壊れて、毎日涙が止まらなくなって、笑顔が消えた。
「大丈夫」
もう壊れたプレーヤーみたいに繰り返すようになってしまった。
笑顔を取り戻したくて、まるで汚泥に沈んでいくみたい。もうここは深い沼の底。
あなたの熱い肉を受け入れて満ちて広がって風船のように弾け何度も突き上げられる淫靡な反動をお腹の奥にまで滲ませる怠惰な慟哭。私の声を何度も届け、あなたは聞く。あなたの息遣いを室内音楽にして、もっと深い音を聞いて、あなたの肉が私を奏でて香りが満ちて、もっとあなたの鎖で私を縛り付けてと首を振りながら乱れる腐乱の性。
瞳を向けてもあなたは潤んで見えて、痛めつけてくるあなたの手と指が、私の肉をひねりあげ、うっ血した痕を残し、私は濡らし、あなたの欲望を受け入れ、肉を欲しい、欲しい、欲しいと泣いて乱れる牝人形になる甘美な時間は、遠い、遠くて、手を伸ばしていたら、いつの間にか、そう、苦しくなってしまって、最後に仮面をつけたように。
「大丈夫」
「大丈夫」
「大丈夫」
あなたへの向き合い方を探るよりも、自分との向き合い方を忘れてしまって、胸が痛くて、自分で乳房をつねり上げても、感じない、感じられない、私には必要なものがあって、感じられない、感じない、感じさせられない。だから、壊れてしまいそう。
あなたと感じあった時間が遠くなりそうで怖い。だらしなく股を開いて受け入れた熱い肉の伝わる脈動が薄れていきそうで怖い。痛めつけられだらしなく汁を漏らし、はしたなく腫らせた牝の芯が、じんじんしていた突き抜けそうで留まっている感触が消えてしまいそうで怖い。私はいつの間にか、あなたと私の間を難しく考えすぎていて、わからなくなった。
「大丈夫」
でも大丈夫じゃない。
一時でもいい。ほんの少しだけ、一人の弱い女に戻って、イイデスカ?
どこから来たのか行く先もわからない涙が消えるまでの間。
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